「さあ、精液便所様。立てるかな?」
冷たい石畳の上に全身を投げ出していたメリッサに、ならず者が呼びかける。
が、メリッサの瞳は中空を見つめるだけで反応せず、もちろん立ち上がる気配など微塵もなかった。
「ったく。おいお前ら、売り手がついたんだから手加減しろっつったろーが」
「悪ぃ悪ぃ。ついつい、な」
「ついつい、じゃねぇよ。突っ返されたら溜まったもんじゃねぇ……」
そうぼやきつつも、何人かの人手を借りて、動かないメリッサの身体を大きなずた袋の中へと仕舞いこむ。
「ま……どうにでかなるか」
メリッサの入った袋を担ぎながら、ならず者はそう呟いた。


クルルミクの街は比較的治安は良い部類に入る。
最近は冒険者たちが増えたことで若干翳りはあるものの、それでも近隣諸国では屈指の治安の良さを誇っている。
理由は現君主ビルゴ王子をはじめ、歴代の君主たちがそこに多大なる尽力を費やしたからだが。
ただ、それには裏の理由もある。
治安が悪いと言うのは、無法が統率されていない為。
案外治安が良いといわれる街に、大きな盗賊ギルドがあったりするものだ。
そしてここクルルミクでは――。

うぉぁあぁぁぁぁぁぁぁ……っ
歓声が閉ざされた空間に響き渡る。
観客たちは狭苦しく席に腰を下ろし、中央に作られた闘技場へと視線を向けている。
そこにいるのは、一人の剣士と異形の魔物。
ほとんど裸に近い格好に両手剣だけを持った剣士は何度も魔物を倒そうと剣を振り襲い掛かるが、その全てが阻まれ、逆に壁際へと追い詰められる。
「殺せぇぇっ!」
「ぶっ殺せ!」
「生きたまま食いちぎれぇぇぇ!!」
狂ったかのような声があちこちで上がり、それに応じるかのように魔物が剣士へと襲い掛かる。
「ひ……っ!? や、やめ……来るなぁぁぁっ!!」
剣士の叫びも虚しく、魔物は身をかばう両腕を掴み、それぞれを無造作に引っ張ると引きちぎった。
剣士の口から、例え難い悲鳴が上がる。
それを聞き、煩そうに首を振ると倒れ掛かった剣士の身体を蹴り上げ……吹き飛んで地面に転がった身体を何度も踏みつけた。
蹴られた時点で戦意……というか意識のほとんどを失っていた剣士は、蹴られる度に呻き声を上げ、その声は次第に小さくなっていく。
が、魔物はいたぶるのをやめない。
観客の歓声がさらに盛り上がるなか、ようやく魔物が踏みつけるのをやめた時、そこには元人間と言われても気づかないような、肉塊が転がっていた。
全身の骨は砕け、圧力に負けた皮膚は破れて肉やら内臓やらがはみ出し、しかもそれらは踏みにじられていてなにがなんだか分からない。
頭蓋も完全に割れており、もちろん中に納まっていたものは跡形もなく踏みしだかれていた。
かろうじて形を残しているのは足だけだったが、それも何度も踏まれてありえない方向にいくつも曲がり、出来の悪いオブジェよりもさらにひどい有様になっていた。
まだ知識もままならない幼子が、粘土で遊べば出来るだろうか。
魔物は手に持った剣士の両腕を振り回し、打ちつけ、勝鬨を上げる。
その声に、観客も合わせて叫び声を上げた。

ここは、クルルミクにある非合法の闘技場。
運営は個人でされていたが、貴族や商人たちと少なくないコネがあり、未だに摘発をされていない。
観客は、貴族であったり犯罪者であったり。
共通項は金を持っていて、狂った趣味の持ち主、と言うこと。
中には、ちらほらと聖職者の姿も見える。
クルルミクの治安がそれなりにいいのは、ここである程度の鬱憤を晴らすことが出来るからだ。
表で犯罪を犯し捕まれば、最悪極刑が待っている。
が、ここなら伝もあり捕まる事もなく、しかも残酷なショーをいくらでも見れる。
自分でする事は出来ないが――ただしそれなりの金を払い申請すれば、公開という条件はつくもののいくらかの犯罪行為に似たことはする事が出来る――それでも、客は絶えず、後ろめたい己の欲望を満たしてくれる演目を求めてやってくる。


「さぁてお客様。本日はようこそおいでくださいましたっ」
闘技場の中央に現れた男が、拡声の効果を持った魔具でそう礼を述べる。
先程までいた魔物は既に退き、無残な死体はスタッフによって片付けられていた。
「本日の見世物は先程ので終了とさせていただきますが……ご満足いただけましたでしょうか」
その呼びかけに、納得と不満の声が半々にあがる。
当たり前だろう。
それまでにいくつか見世物があったとはいえ、それで納得出来るなら何度も足を運ばない。
満足だと答えた客も、それはあくまでもこの瞬間だけであり、また日々を過ごせば鬱憤が溜まる。
善行は終わりがないが、悪行もまた終わりはない。
「そうですかそうですか。分かりました。では……本日は特別に、特別にもう一つ、ご覧に差し上げます!」
声高に宣言した男へと、賞賛の声がかけられる。
闘技場に、割れんばかりの拍手と歓声が立ち上がる。
「それでは本日の特別ゲスト……かの"竜神の迷宮"で行方をくらませた、"鋼の聖女"! メリッサ=フィーネ=レンベルクです!」
その瞬間、声も拍手も止んだ。
誰もが「まさか」「ありえない」という思いを抱き、そして「本当だったら」とどす黒い願望を願ったからだ。
そして男が入場口を示すと……そこには、甲冑に身を固めた、メリッサが立っていた。
瞬間、静まり返った空間は再び割れんばかりの声に満たされる。
彼女の素顔を知っている者は少ないが、その甲冑に見覚えのある者は多数に及ぶ。
似た鎧など簡単に作れても、さすがに使い込んだ跡などは再現出来ない。
そして何より、その意思の強そうな瞳が、観客たちにあれは本物だ、と思わせたのだ。
「さぁて、本日メリッサが戦うのは……こいつだぁぁっ」
指を鳴らし、逆の入り口を示す。
のそりとゆっくりとした足取りで出てきたのは、身の丈三メートル程度はあるだろう、巨大なミノタウロスだった。
手には木製の棍棒を持ち、あとはなにも身につけていない。
下半身には、荒々しく猛るモノがそそり立っていた。
メリッサはそれを見ても、しかし顔色一つ変えない。
よく見ると額にはなにか模様が描かれている。
瞳の色も若干、澄んでいるとは言いがたい。
恐らく何者かに操られているのだろう。
そうでもなければ、冒険者としての気概を全て失ったメリッサが、武具に身を包みこんな場所に立っているはずがない。
それは観客にも察せることではあったが、それよりもなによりも、これからメリッサがどうなるのか……そしてその瞬間を見れるのか、それだけで観客の興奮は嫌が応でも上がっていく。
「それでは始めてもらいましょう。……ファイッ」
男の掛け声とともに鐘が打ち鳴らされる。
そして観客の声も、一段と高く大きくなった。
鐘がなった瞬間、メリッサは矢の如く疾走する。
剣を両手で構え、ミノタウロスを見据え。
「たあぁぁぁっ」
上段に構えた剣を、飛び掛りながら振り下ろす。
それは若干鋭さには欠けていたが、十分な重さを持った一撃。
が、それはミノタウロスの身体に届かない。
「ぐ……ぁ……?」
下から、無造作に振り上げられた巨大な棍棒が、メリッサの鎧に包まれた腹部を強打していたからだ。
軽く吹き飛ばされ、地面の上をのた打ち回る。
「げほ……がはっ、はぁ、はぁ……っ」
その苦しむ様子は、観客のボルテージをさらにヒートアップさせていく。
「いいぞぉぉっ」
「やれぇ、やっちまえええっ」
下品な喚声があちこちで沸きあがり、それに押されるようにミノタウロスがメリッサへと近づいていく。
「あ……、やめ、ろ……来ないで、や……だ……っ」
先程までの強気はなく、ミノタウロスが近づいてくるのをただ怯えて見ているだけのメリッサ。
剣はその手になく、立ち上がる体力も気力もない。
「ぶふぅぅ……」
鳴き声か笑い声か、判断の付かないものを漏らしながら、ミノタウロスはメリッサの身体を捕まえる。
「や……っだぁぁぁぁっ!? 離して、やだ……やめて、いや、いやああああっ!!?」
泣き叫び、暴れるメリッサ。
ミノタウロスはそれを煩げに見て、握った拳で殴りつける。
「げふ…………っ」
振りぬかれた拳に顔面を強打され、一瞬メリッサの意識が飛ぶ。
その間にメリッサをうつぶせに寝かせ、下半身の服を破りとっていく。
白い尻が露になると、口笛やらなにやら、観客たちはさらに興奮の度合いを増していった。
「や……ぁ、やだ……ぁ…………っ」
小さな声で拒絶するメリッサだが、ミノタウロスには届かない。
そして、メリッサの腕ほどはあるそそり立ったモノを、まだ濡れてもいない秘部へと捻じ込んでいった。
「あ……ぎ、ぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!? 痛い、いだいぃぃぃぃぃっ!! 抜いて、抜い……でぇぇ……っ!!」
ミノタウロスのモノは先走りの液でそれなりに濡れていた。
しかし、それではほとんどほぐれていない上、サイズが合わない膣内にはきつすぎる。
目を白黒させ、絶叫を上げながらメリッサは観客の前でなす術も人外の獣に犯され始めた。
「あ、ぎ、ひぐっ、あが……が、い、ぎぃぃ……や……ぁ…………抜い、うぐ……っ」
しっかりと背中を押さえつけられ逃げられない。
それなのに逃れようと腕を暴れさせるその様は、まるで縫い付けられた虫のよう。
観客たちもその仕草が面白いのか、あちこちで笑い声が起こる。
涙を流し、鼻水と涎を溢れさせながら、メリッサはそれでも必死になる。
「あぁ……あぐ、ひ……ぃ、いぐぅぅ……あ、あぁ…………っ」
それでも、苦しんでいた声が次第にか細くなり……次いで、艶かしいものとなっていく。
ミノタウロスが腰を突くたびに、僅かにだが水音が混じり始めた。
感じているか否かは別にして、メリッサの身体が自然と受け入れるように反応しているだけ。
「なに犯されて感じてんだよぉ!」
「"鋼の聖女"様が、獣に犯されて発情してんのかぁ!?」
「とんだ淫乱聖女様だぜっ」
下品で安い文句が飛んでくるが、その一つ一つがメリッサの身体に突き刺さる。
「ち、ちが……感じて、なん……んぁぁっ、感じて、なん、かぁぁ…………っ」
必死に抵抗するものの、一度馴染み始めてしまった身体は言うことを聞かない。
それどころか、ミノタウロスの動きは激しくなり、満足に言葉すら吐き出せなくなってしまう。
「あ、あぁぁ……や、めぇ……そ、んな……したら、壊れるぅぅ…………っ」
甲高い声で鳴きながら、必死の思いでメリッサが叫ぶ。
だがミノタウロスは止まらず、観客の罵声も止まない。
「ぶふぅ……ぶふ…………っ」
不意にミノタウロスのモノが膨れ上がり、直後大量の精液がメリッサの中へと注ぎ込まれていく。
「え、あ!? や、やああああっ!! やだ、抜いて、こんなの、いや……いやぁぁぁぁ……っ!」
湧き上がる歓声の中で、メリッサの悲鳴が虚しく響いていった。

「……皆様、ご満足いただけたでしょうか」
全てが終わり片付いたあと、再び男が現れそう問いかける。
今度は、概ね満足といった返答がある。
「それはそれは、当闘技場においてもお客様方に気に入っていただきまして、まこと感激の至りでございます」
深々と頭を下げてそう続ける。
「では、本日はこれにて終幕とさせていただきます。本日の見世物について詳細を確認されたいお客様は、スタッフの方へとお願いいたします。それではお帰りはお気をつけて。衛兵に捕まらないよう、ご注意してください。またのお越しをお待ちしております」
三々五々と、観客たちは帰っていく。
あとに残されたのは、誰もいない観客席と、闘技場の中に残された、メリッサのもがき続けた跡だけだった。


メリッサを買い取ったのは、この闘技場の主だった。
冒険者と言えば誰でも良かったのだが、選り好みしている間にメリッサが品目に並べられることになったのだ。
他にも有名どころは沢山いたが、主はメリッサを選んだ。
有名どころになれば天井知らずの値段になるのが常であり、メリッサももちろんそう安くない額だったが、もう一つ目をかけていたのは他国に買われてしまい、また金額的にも競り合えなかった為断念したのだった。
しかし、買ったはいいが当時のメリッサは心は折れ、剣を振るうことすら満足に出来なかった。
ハイウェイマンズギルドの調教が、さすがに効きすぎたらしい。
それでは客を呼べぬと、主は外法の術士を呼んでメリッサに強い暗示をかけさせた。
まだ自分は負けてないと。
ただし、ここで勝てねば生き延びれないと。
その二つの暗示をかけ、暫く休ませることでメリッサは再び戦える身体になった。
もっとも……だからと言って求められたのは「戦う姿」ではなく「辱められる姿」だったが。


ある時は。
「い……ひ、や……う、ああ……っ」
メリッサは、またも獣に組み伏せられていた。
違うのは、今回は人型ではなく、大型の四足の獣……それも普通の獣ではない。
キマイラと呼ばれる、人の手によって生み出された合成獣だった。
その身体は獅子を基にしていて大きく、尻尾には滑った鱗を持つ蛇が、獅子の頭の上には黒山羊と爬虫類の頭が生えており、それぞれが思い思いに吼えている。
そのキマイラの、獅子のものと思われる大きなモノはメリッサの肛門に押し込まれており……秘部には、蛇が潜り込んでいた。
「あ、あ、ひぐ……ひ…………っ」
大きすぎるモノで肛門を貫かれ、苦しげに口をパクつかせるメリッサ。
秘部に出入りする蛇の太さもなかなかで、並の男のモノよりは十分に太いだろう。
そんなものに同時に責められ、正気を保てといわれて果たしてどれだけの者が耐えられるだろうか。
「どうした"聖女"様! さっさとその不気味な化け物倒しちまえよ!」
「それとも、化け物にケツ犯されてよがってんのかぁ!?」
観客の声になんとか応えようとメリッサは手を伸ばす。
手の先には、取り落とした剣が転がっている。
(あれさえ……あれ、ば…………っ)
必死の思いで手を伸ばすが、それはすぐにキマイラの前足で押さえつけられる。
体重の乗った足は重く、折れるほどはいかなくても十分な苦痛をメリッサに与えた。
「あ……いぎぃぁぁぁぁ…………っ! ど、どかして……折れる、折れちゃう……っ」
泣いて懇願するものの、獣に言葉は通じない。
あくまでも本能で腰を振り、メリッサを犯していく。
「ぐるるるる……」
獅子の喉が啼く。
そろそろ限界が近いのか、単調だった動きに変化が現れる。
「あ、あ、あああっ!? や、め……お尻が、めくれちゃう……っ」
激しい動きにそう叫ぶが、聞き届ける耳はない。
獅子の口から粘度の高い唾液が溢れ、メリッサの髪を汚していく。
「ああ……やだ、汚い……こんなの、う、うぅぅ…………っ」
外法の獣に組み敷かれ、身体を汚され、犯されながら泣くメリッサ。
「ぐる……っ」
そして獅子が短く唸ったかと思うと。
「あ、あぁ!? や、あ、お、なか……裂け、ちゃ…………っ」
メリッサが目を見開いて叫びだす。
逃れようと暴れるものの、体重差はいかんともしがたく、またこの姿勢では力も出せず。
そうしているうちに、メリッサの下腹部がぽこりと膨らみ……収まりきらない精液が、結合部の隙間から溢れてきた。
「や、あ……あ、おなか…………苦しい…………」
荒い呼吸の中そう呟き、メリッサは懇願のまなざしで周囲を見る。
だが、そのメリッサを見ているのは……見下ろしているのは、全てメリッサを助けてくれる者ではない。
冷たく、蔑んだ視線はメリッサから希望を奪い取るには十分だった。
「う、あ……あ、い……やぁ…………っ」
その視線から逃れるように顔を背け、それと同時に満足したのか、キマイラが離れる。
高く突き上げられた尻の窄まりは必死に閉じようとするがなかなか戻らず……腸内へと溢れるほど注ぎ込まれた獣の精液を噴き出して、観客の笑いを誘うだけだった。


そしてまたある時は。
「あ、ぐ……んふぁぁぁぁうぅぅぅ…………っ」
地面に転がり、メリッサは腹を押さえていた。
別に強打された訳ではない。
その証拠に、メリッサの対戦相手である巨人は離れたところから、立ち尽くしたまま様子を眺めているだけだった。
身の丈三メートルを超える長身に、全身これ筋肉の鎧。
並の人間なら十倍近いサイズを誇るのが、巨人族である。
特に今ここにいる巨人は、腕が十対ある「百手巨人」と呼ばれる種族だった。
本当に百の腕を持っている訳ではないが、あまりの腕の多さにそう名づけられている。
その百手巨人の腕には、空になった巨大な注射器が何本も握られていた。
「ほらほら、どうした〜?」
「どうせ今までも散々醜態見せたんだからよ、別にいいだろ」
「せいぜい派手に漏らしちまえよ」
百手巨人が持っている注射器の中には、浣腸液が詰まっていたのだ。
その全てを、メリッサの中へと注ぎ込んだ……それゆえか、メリッサの腹は膨らみ、時折耳障りな異音を鳴らせていた。
「は……ぁ、はぐ…………っ」
それでも脂汗を浮かべ、震える足に力を篭めて立ち上がる。
勝てば逃れられる……毎回負けているが、それがここでのルールだった。
……守られるかどうかは別にして。
「ま……ける、もんかぁ……っ」
震える手で剣を構えて、ふらつく足で百手巨人へと近づいていく。
歩くたびに腹部に激痛が走り、肛門が決壊しそうになる。
それを意思でなんとかねじ伏せ、剣が届く間合いになんとか辿り着いた時。
「あ」
持っていた剣は、百手巨人によってあっさり奪われてしまった。
そして、何本もの腕で捕まえられ、抱え上げられる。
「や……めて……う、うぅ……苦しいぃ……っ」
姿勢が変わったことで、メリッサの顔はさらに苦痛に歪む。
巨人はしかし、その声を無視して……メリッサの足ほどの太さのあるモノを、肛門へとあてがう。
「ひっ!? だ、だめ……今、そんなの入れられたら、だめ……や、だ……あ、い、ぎ……ひ、ぐ、うぁあぁぁぁああああ……っ!?」
メリメリと音を立てて沈んでいく巨人のモノ。
目を見開き、声にならない悲鳴を上げながらメリッサはもがく。
空いている腕はメリッサの鎧を剥ぎ取り、乳房を揉みしだき、秘部を責める。
「や、あ、ひぐ……っ、だめ……ん、あ……ひぁ……う、ぐぅぅ…………っ」
快感と苦痛が同時にメリッサの精神を苛む。
あまりの落差に、メリッサは自分の身体がどうなっているかなど分からない。
観客の声も、なにも耳に入らず、ただ鳴き声と、悲鳴と、嬌声を上げているだけ。
いや、それすらも本人に聞こえているかは怪しい。
苦痛と快楽が精神を支配していて、もうなにも考えられない……考える余裕のないところまでいっていたからだ。
痛いのも気持ちいいのも混ざり合って、もうなにがなんだか分からない。
しかし観客や巨人にはメリッサがどうなっているかなど関係ない。
罵声を浴びせ、嘲笑し、巨人はメリッサの身体を犯すだけ。
太すぎるモノが出入りする度に水音が響く。
「おいおい、"聖女"様がすげぇ顔してんぞ」
「なんだよあれ。どこの淫売だよ」
白目を剥きかけ、舌を垂らし、だらしない表情で喘ぐメリッサ。
そこには、"聖女"としての威厳も……人としての尊厳も存在していない。
はしたない、ただの女がいるだけだった。
「ぐぅぉおぉぉ……」
巨人が吼え、メリッサの腸へと大量の精液を注ぎ込む。
「あひ……ぃ、ひはぁぁあぁぁぁ…………っ」
有り得ないほどの量の精液を注ぎ込まれ、メリッサの腹が妊娠したのかと見違えるほど膨らむ。
「あ……はひ、ひ……ひぁ……っ」
あらゆる体液を垂れ流しながら、快感とも苦痛ともいえない声を漏らす。
「は……っは、はぁ…………ぁぁ…………っ」
と、息をつく暇もなく、巨人はその巨大なモノを引き抜きにかかった。
腸壁が引きずられ、声を漏らして震えるメリッサ。
「らぁ…………めぇぇ……い、ま……抜いた、らぁ……」
震える声で呟くが、力もなく張りもない。
その声は誰にも届かず……巨人のモノが全て引き抜かれる。
「や……見、ない……でぇぇっ」
直後、凄まじい音とともに、大量の汚物が噴き出てきた。
巨人の精液と混じり、どろりとしたものが。
「あ、あーっ、あぁっ、あ、ん…………ぁぁぁぁっ」
汚物を吐き出しながら、メリッサが鳴く。
しかしその顔と声には、隠せないほどの快楽が混じっていた……。

こうしてメリッサは、月に三度ほど多くの衆人の前で辱められた。
残りの日は、見世物になった時に出来た傷の治療や……個別の客へと貸し出される。
メリッサを求める客は大まかに三種類で、一つは王侯貴族。
一つは教会の関係者。
最後は、メリッサによって苦汁を舐めさせられた犯罪者。
これらが、代わる代わるメリッサの身体を求め、犯していった。
ある者は従順な下僕としてのメリッサを求め。
ある者は立場ゆえに抑えてきた思いのたけを吐き出し。
ある者は力ずくで陵辱し、中には殺さない程度に切り刻む者もいた。
焼き鏝を押し付けられたのも十や二十できかず、骨折や裂傷、時には生死の境にまで陥ったこともある。
客に負わされた傷は、雇われた聖職者――ただし犯罪者として破門をされている――によって癒され、翌日には大抵傷跡の一つも残っていなかった。
メリッサは死ぬことを許されず、ほぼ毎日なんらかの形で陵辱される日々を過ごしていた。


それが三月ほども過ぎたあたり。
「……あれが妊娠しているそうだな」
「はい。誰の子かは分かりかねますが」
メリッサを買い取った男と、その腹心がソファに座り会話している。
議題は、メリッサの処遇について。
「まったく、面倒なことになったものだ。知られれば、高値を吹っかけてくる者もいるだろう」
「……お譲りにはならないのですか?」
意外すぎる主の言葉に、腹心が疑問を投げかけた。
「ただでさえ、俺はあの"鋼の聖女"を買い取ったということで、方々でいらぬ恨みを買っている。ここで子を誰か一人に譲ってみろ。いらぬ噂を立てられるだけだ。……かといって、囲ったままでも同じこと。"聖女"の血筋を独り占めしようとする業突張り……と言われるだろうな」
その言葉に、腹心は黙って頷く。
「それに、最近のあれはもう駄目だ。昨日の見世物を見たか? もう剣を握らず、迷わず獣のモノを咥え付きにいきよった。"聖女"は最後まで気高く、抵抗する……それが客の望む姿だよ」
かけたはずの暗示の上からもその心は砕け散り、もう気高いと思わせるそぶりすら見せなくなっている。
呆れた声には、既に処分は決まったと匂わせるものがあった。
「しかし、よろしいので? あれはかなりの高値であったと記憶しておりますが……」
主の考えは、聞かずとも分かる。
しかし、最悪損害が出るとするならば、諌めなくてはならない。
腹心のその気持ちを汲んで、ふんと鼻を鳴らし。
「あれにかかった費用は全て回収済みだ。知っているか? "聖女"を求める連中に、俺が使った金の一割程度を提示しても奴らは飛びつく。まったく、ぼろい商売だよ」
それが本当であれば、十人の客を取っただけで、既に元は取れていたという事になる。
見世物にしている関係もあり、諸々の経費を差し引いても十分すぎるくらい儲かったことになるだろう。
「それで、どうするおつもりで? 処分するといっても、それはそれで問題になるでしょう」
「いくら俺でも、あれは殺せんよ。下手に殺せば、それはそれで問題になるだろうからな……」
ふむ、と顎に手をやり。
「……確か、グラッセンに貧民窟があったはずだな。俺たちも世話になっている」
貧民窟とは、いわゆる人間の掃き溜め。
乞食かそれと同然の者たちが身を寄せ合い暮らしている。
それなのに、お互いがお互いを信用しておらず、人身売買だの殺人だの……ともかくありとあらゆる犯罪が横行している。
闘技場で使う人間や、資金繰りで流す麻薬のほとんどをそこで徴収したり、売りさばいたりしているのだ。
「あそこにやる、と? 正気ですか」
「なに、今まで……いや、これからもお世話になるんだ。一つくらい、世話をしてやってもいいだろう? それに、俺はこう見えても慈善家でな。つい先日も孤児院に寄付したところさ」
もちろん、その見返りもある程度予測して、だが。
「了解いたしました。では、手はずを整えますので時間をいただきとうございます」
「ああ、任せる。……他の連中には、首を吊ったとでも流しておくか。狂い掛けてるのは事実だからな」
こうして、再びメリッサは人々の前から姿を消すことになる。
余談だがこの闘技場、メリッサを手放した数日後に騎士団によって摘発を受けている。
その先頭には、かつてメリッサとともに戦った一人の騎士がいたが、それはまた別の話。
ただし……己の無力さを再び嘆いたということだけは、述べておこう。


「ん……ふはぁ……あは、もっとぉ……卑しい穴を、使ってぇ…………っ」
むっとする臭気の中、一人の女が何人もの男に犯されていた。
……いや、どちらかといえば女が男たちを相手にしていた、と言うべきか。
だらしない表情を浮かべ、両手で、足で、全ての穴で男のモノを咥え、扱き、その精を吐き出させている。
今も男に犯されているその下腹部はぽこりと膨らみ、女が妊娠しているということを示している。
だがそれでも……男たちは女を犯すことをやめないし、女も男を求めて止まない。
いつからここでこうしているのかは分からないが、手入れもされておらず適当に伸ばされた髪は全て精液で汚され、肌という肌には何重にも精液が塗り篭められていた。



まるで精液をたたえた桶に身を沈めたかのよう。
女はほぼ丸一日、男たちの相手をしていた。
時には麻薬を吸わされ、神経が敏感になる薬を飲まされ。
食事は残飯のようなものに精液がかかっていて当然だったし、水分は精液か、それとも小水か……。
とにもかくにも、人として堕ちるところまで堕ちた姿がそこにはあった。
だが誰も知らない。
その人として堕ちるところまで堕ちたその女が、かつて"鋼の聖女"と呼ばれていた人物だ、などと。
ただ使える女がいて、己の浅ましい欲求を満たしてくれる。
それだけでそこにいる者たちには十分だったのだ。

「やっと……やっと見つけたよ、メリッサ」
そう声をかける人物が現れたのは、メリッサがここに連れて来られてから一月以上経った頃だった。
黒い装束に身を包んだ人物は、傍らに眼鏡をかけた小柄な少女を連れている。
「メリッサ…………っ」
あられもない姿で快楽に溺れているその姿を見て、少女は苦しそうに呟いた。
いろいろな葛藤もある。
だけど今は……助けるしかない。
「……ピリオ、お願い」
「うん」
黒装束……スーの呼びかけに、ピリオと呼ばれた少女が頷き、詠唱を始める。
それに気づいた何人かが止めさせようと立ち上がるが、その前に魔法は完成し発動していた。
「――眠れ。汝らが意思は眠りを欲し、身体は休息を求めている。いと優しき母の手に抱かれるが如し、安らかなる眠りつくがいい……」
立ち上がろうとしてかなわず、男たちは崩れ落ち、安らかな寝息を立て始める。
そしてメリッサを犯していた男たちも……メリッサも、眠っていた。
「……いこう」
スーが自身の身体も汚れることを厭わず、メリッサの身体を抱き上げる。
その身体は……以前と比べて、信じられないほど軽くなっていた。


「メリッサ様!? スー殿、ピリオ殿。メリッサ様は……っ」
初老の域に達そうとしていた男が、スーに抱かれたメリッサを見て声を上げる。
「大丈夫だよ、バンドルさん。今は寝てるだけ……」
「ごめんなさいメリッサ。本当はこんなことしたくなかったんだけど」
ぐっすりと眠るメリッサの顔には、先程まで張り付いていた狂ったような表情はない。
落ち着いた、以前のような顔があった。
……あの顔だけは、バンドルにだけはみせられない。
スーとピリオは思ったが、果たしてそれは守られるのか微妙なところだった。
「あ、あぁ……随分とおやつれになって……それに、こんな、ひどい仕打ちを…………っ」
メリッサの身体には、何箇所か暴行の痕があった。
酷くはないが、白い肌についた傷痕は見ていても痛々しい。
また、下腹部やふとももには刃物で付けられたような傷痕――口にし難い、卑猥な文句がいくつも付けられていた。
それほどまでに、メリッサのここでの立場は低いものだったのだ。
「……ここを焼き払ってしまいたい気分です……っ」
バンドルは恨めしげにそう呟くが、事はそう簡単には済まない。
「バンドルさん、駄目だよ。ここにいる人たちに罰を与えるのは私たちじゃない。神様かもしれないけど……まずは、この国の衛兵たちの仕事だよ」
麻薬や人身販売についての裏づけは取れている。
既にそれらは出すべきところに出されており、後は事が起こるのを待つだけ。
それでもなにもなければ……あとは人を超えた存在にすがるしかないだろう。
「分かっておりますが……口惜しくて、なりません……」
「それよりも、早くメリッサをちゃんと休ませてあげないと。……それに、やっぱり……メリッサ、赤ちゃんがいるよ」
ピリオの言葉に、バンドルが凍りつく。
「な、な……っ」
精液に濡れたメリッサの腹を撫でながら、ピリオは冷静さを保ったままで告げる。
「勘違いしないで下さい。ここの人たちではない、と思います。メリッサがここに来たのが大体一月前らしいから……その前の場所で、だと思います。どっちにしろ、親は誰か分かりませんけど……」
そういって、ごめんなさいと頭を下げる。
「い、いえ……ピリオ殿に謝られることは、なにも……。己の至らなさには、身体が焼かれそうな思いですが。……分かりました、とにかくここを離れましょう。一度クルルミクに戻り、頼れる場所を探します」
「それがいいよ、うん。……もう、誰もメリッサを傷つけないような、そんな場所に連れて行かないと……」
スーの言葉に全員が重く頷き、三人はその場を静かに立ち去った。



5years after...

テラスに置かれた安楽椅子に、一人の女性が座っていた。
腰まで届く長い金髪を揺らし、ただじっと一点を見つめていて。
その視線の先には仲良く遊ぶ双子の姉妹の姿が見られた。
あの姉妹の母親だろうか。
顔には微笑が浮かび、それはまるで双子を暖かく見守る母親のそれに見えなくもない。
「お嬢様……失礼します」
と、不意にその背後に老人が寄ってきた。
礼服を着た、一人の女騎士を連れ添って。
「お嬢様にお客人です。……よろしいでしょうか?」
話しかけても、お嬢様と呼ばれた女性はまったく振り返ろうとしない。
それどころか、視線の先にいた双子の姉妹はどこか別の場所に移動してしまっていて、笑顔はそのままに、誰もいない虚空を見ているだけだった。
「お嬢様、失礼します」
老人がそう断り肩を叩く。
すると、ゆっくりとした動作で女性が振り向いた。
「あ……」
女性のどこかぼやけていた視線が老人の顔に向き、微笑んでいた顔がより一層ほころんで……。
「いらっしゃいませ、お客様……この、卑しい精液便所をお選びいただき、ありがとうございます……」
口の端からだらしなく唾液を垂らし、椅子に座っていた女性は足を大きく広げる。
「前でも後ろでも口でも……どこでも、お好きな場所をお使いくださいませ……」
顔には淫蕩な笑みが浮かび、先ほどまでの穏やかな微笑はどこにもなかった。
「え……、あ、そ、そんな……っ」
老人に付き従ってきた女騎士が、目の前の女性のその言動に驚愕し、膝を床についてしまう。
「お客様ぁ……ご利用に、ならないのですか……?」
はぁ……と熱く吐息を漏らし、女性は上目遣いで老人を見上げる。
普通の男性なら、それだけでもキてしまいそうな、そんな表情。
「……本日は結構です。おやすみください」
「はぁい。では、またのご利用をお待ちしてますね……」
ぺこりと、そこだけ優雅に頭を下げると、女性は再び庭に向かい微笑を浮かべてどこかを見つめる。

「う、う……ぐ、そんな、そんな……っ」
「お見苦しいとは思いましたが、これが……あの方の今のお姿です」
沈痛な表情で頭を下げる老人と、その前で泣き崩れる女騎士。
少し離れたところには先ほどの女性が座っているが、こちらの様子には見向きもしない。
「やっと、やっと見つけて……それで、こんな……っ」
だんっ、と強く床を殴りつける。
「救出した頃は……まだ少し、私やスー殿、ピリオ殿。そして……フィオーネ殿。あなたの事も理解しておりましたが……お子が出来ていると理解された頃より、段々と……」
「おろす事は考えなかったのですか!?」
その言葉に、沈痛な表情はさらに深く沈んでいく。
「……難しい選択でした。我々がお助けした時点では、まだメリッサ様の体力、体調ともに不安定でして……いや、きっとそれも重なったのでしょうな。安定してきた頃には、もはや……」
両方が手遅れでした、と老人が涙を滲ませて呟く。
「く……っ、私があの時、あんな醜態を見せていなければ……っ」
フィオーネは悔やんだ。
もしあの時、すぐにでも追いかけていれば、と。
しかし、そうして全滅していたら今の自分はない。
あの時もそれで悩み、帰還したのだ。
もしかしたら、という淡い期待があった事も否定はしない。
だが……それでも、あの時は無理矢理にでも追跡するべきだったのだ。
結果論であり、追跡しても変わらなかった可能性、むしろ最悪の可能性に変わっていた方が高いのは分かる。
だがこの五年間、フィオーネはあの時の判断についてただただそう悔やむばかりだった。
その結果がこれでは……もはや悔やむだけでは足りない。
「……フィオーネ殿、お気を確かに。確かに今のメリッサ様は……ですが、これを預かっております」
老人は胸元から一通の手紙を取り出した。
手紙は薄く汚れ、それなりに時間の過ぎている事を物語っている。
「これは……?」
「お読みください」
そう告げて手紙を預けると、老人はその場を辞した。
テラスに、物言わぬメリッサとフィオーネだけが残される。
「……読みますね、メリッサ」
フィオーネはそう断ってから、丁寧に畳まれた手紙を開いていく。

『フィオーネへ
ごめんなさい ありがとう
もっと言葉を届けたいけど これが限界
出来れば あなたの中の私は以前のような姿でいてくれれば
いつかまた 四人で会いたい』

手紙に書かれていた言葉はそれだけで、その短い文章も字が震え、ところどころ滲んでいるのは……。
「メリッサ……私こそ、ありがとう……」
涙を流しながら、フィオーネは椅子に座るメリッサに抱きつく。
メリッサは不思議そうな表情を浮かべると、抱きついている腕を見つめ……一筋、涙を流した。


「マリア様、ルイズ様。そろそろ食事の時間ですぞ」
「「は〜い」」
呼ばれた双子の姉妹が老人の下へと駆け寄ってくる。
「ね、ね! さっきね、でっかい鳥さん見たの!」
「鳥さんじゃないよルイズ。竜さんだよ」
きゃっきゃっと楽しそうに、自分たちが今日見たものを老人に報告する。
「ほう。竜ですか。ということは、竜騎士ですかな」
それが誰か知っているバンドルは、しかしあえて名を出さず、とぼけた振りをする。
もちろん、子供にそんなことが分かるはずもない。
「竜騎士! クルルミクの一番強い騎士さんだね! こんなところに来たんだぁ」
「ルイズは騎士さんが好きなの?」
「もちろん! だって早く大きくなって、強い騎士になって、お母様の失くしたの、取り返さなくちゃ」
「……ルイズ様……」
「そうだね。わたしも、神様の勉強しっかりして、ルイズと一緒に取り返すの」
「マリア、様……っ」
老人は、無邪気な二人のその言葉にただただ涙を流す。
「あれー。バンドル、泣いてる〜?」
「どうしたの、バンドル爺。おなか痛い?」
「いえ、いえ……そうではありません。お二人が余りにも立派で……」
バンドルと呼ばれた老人の言葉に、双子はただ首を傾げる。
「りっぱ、ってなぁに? マリア知ってる?」
「えっとね、すごいって事だったかなぁ……」
老人はしゃがみこみ、不思議そうな顔をしている双子をしっかりと抱きしめた。

クルルミク領内に、かつて"鋼の聖女"と呼ばれた女性の従者と後援者たちが孤児院を兼ねた施療院を建設したのは、"鋼の聖女"の行方が分からなくなったワイズマン騒動の終焉から二年後だった。
その施療院は、主にグラッセンとの戦役で住む場所や家族を失った者たちを受け入れる場であり、歴史に名を残す事はなかったが長く市井の人々に愛され、頼られていたと近隣地域に言い伝えられていた。
またその頃、仲のよい双子の姉妹と、それを温かく見守る女性の姿がよく見受けられていたが、その彼女の名を知る者はほとんどおらず、ただ"母"とだけ呼ばれていたという――。




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