やあ お客さんかな?
でも残念だけど 今日はもうおしまいなんだ
明日この街を発つからね……準備をしなくちゃいけないんだよ
……え?
どうしても僕じゃなきゃ困るのかい?
……どうしようかなぁ
…………
わかったよ そこまで言うなら 特別だよ
っとと そんなに喜ばなくても……なんだか恥ずかしいなぁ
それで どの詩を歌って欲しいのかな
僕を呼び止めたって事は 詩が聞きたいんだよね
……へえ 珍しいね
彼女の詩を聞きたがる人は もう随分といないんだけどね?
大丈夫 忘れてないよ
自分の持ち歌を忘れる吟遊詩人なんて 失格だからね
ただ…… 知ってると思うけど 彼女は途中から消息が分からなくなったんだ
だから その最後については沢山ある
当時はね 僕だけじゃなく色んな人が歌ってたんだけど だからこそ 沢山 彼女の最後はあるんだ
そのほとんどはあまりにもふざけてて 僕は覚えようとしなかったんだけど
僕が作ったのと 他の人の詩でいいな って思ったのを覚えておいたんだ
どれが聞きたいかは 君たちが決めてよ
僕が歌うのは……

神の奇跡を得られた聖女の詩

悪に破れ堕ちた聖女の詩

全てを捨てあるがままを受け入れた聖女の詩

誇りと信頼を取り戻せし聖女の詩

……さあ どれを聞きたい?